アサーションの基本 ― 自分も相手も尊重する表現

コミュニケーションで大切にしたいこと。それは──「自分も、相手も、大切にする」姿勢

このセッションでは、自己表現における中核スキルであるアサーションの基本を学びます。

  • 言いたいことをズバッと言うだけでは、ただの攻撃。
  • 言いたいことを我慢して飲み込むのは、自分への否定。

そのどちらでもない、心の真ん中を通るような表現。それが「アサーション(アサーティブ・コミュニケーション)」です。

アサーションとは?

アサーションとは──自分の気持ちや意見を、誠実に・率直に・対等な立場で伝えること

ポイントはこの3つ:

  • 誠実に:自分の本音と丁寧に向き合い、嘘をつかない
  • 率直に:回りくどくせず、シンプルに伝える
  • 対等に:自分も、相手も、どちらも尊重するスタンスで

これは、「穏やかでありながら、明確でぶれない」表現のかたちです。

3つの自己表現スタイルの比較

心理学では、自己表現には主に次の3つのスタイルがあるとされます。

攻撃型

  • 表現の特徴:強く言う/威圧する/支配する
  • 相手にへの影響:萎縮させる/反感を生む
  • 自分への影響:孤立・後悔・人間関係が壊れる

受け身型

  • 表現の特徴:言えない/我慢する/気をつかいすぎる
  • 相手にへの影響:不明瞭・気をつかわせる
  • 自分への影響:ストレス・自己否定・不満の蓄積

アサーティブ型

  • 表現の特徴:はっきり伝える/丁寧に表現する/対等な姿勢
  • 相手にへの影響:安心感/信頼が育つ/関係性が深まる
  • 自分への影響:自信/自己肯定感/健全な人間関係

あなたが目指すのはアサーティブ型。それは、自分の心を守りながら人とのつながりを深める道です。

アサーティブな表現の4つの基本要素

アサーションの実践には、以下の4つの視点を意識すると効果的です。

  • 率直さ:自分の意見や気持ちを、正直に伝える
  • 誠実さ:相手を尊重し、責めずに話す
  • 適切さ:状況や関係性に応じた言葉・タイミングを選ぶ
  • 自己責任:自分の気持ちは「自分の責任」として表現する(→アイメッセージにつながる)

アサーションができないときの背景

なぜ、私たちはアサーティブになれないのでしょうか?

よくある理由は以下のようなものです:

  • 傷つけるのが怖い(優しさと混同している)
  • 自分の価値に自信がない(自己否定感)
  • トラブルを避けたい(回避グセ)
  • 「言ったらダメ」と思ってきた過去の体験

しかし、アサーションとは、「攻撃」でも「我慢」でもなく、「誠実さ」と「信頼」の表現。その姿勢を少しずつ身につけていくことが、本当の意味での「やさしい強さ」につながります。

あなたの表現タイプは?

以下の問いに答えてみましょう。

Q1.あなたは言いたいことが言えない場面では、どんなふうに反応しがちですか?

  • 黙る/引き下がる
  • 感情を抑えて笑顔で対応する
  • 怒ったように反応してしまう
  • …その他、自分のクセがあれば自由に記述

Q2.「こんなふうに言えたらいいな」と思う表現を思い出してみてください。

  • あなたが「いいな」と思った表現は、どんな特徴がありましたか?

気づいたことを一言でメモしてみてください。


アサーションは、特別なスキルではありません。自分も相手も、大切にしながら話す技術と姿勢です。自分を偽らない。でも、相手も否定しない。その中間を行く言葉の力を、これから一緒に育てていきましょう。

次のセッションでは、アサーションをさらに具体化するために、「アイメッセージ」という表現技法を学びます。

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