人と関わることは、喜びであり、同時に悩みの種でもあります。
「どうして伝わらないんだろう」「なんでこんなふうに誤解されてしまうんだろう」「わかってほしいだけなのに、距離ができてしまった」、そんな経験を、誰もが一度は持っているはずです。
一生懸命伝えたのに、なぜか相手に誤解されたり、すれ違ったりしてしまう。
それは、単純に、あなたが悪い、相手が悪いということではありません。コミュニケーションとは、そもそもとても繊細で難しい営みなのです。
なぜ、コミュニケーションは難しいのか?
理由はシンプルです。
- 人は一人ひとり、
- 生まれ育った環境も、
- 経験してきたことも、
- 大切にしている価値観も、
- 物事の感じ方・受け取り方も違うからです。
同じ出来事を見ても、同じ言葉を聞いても、人はそれぞれ違う世界を感じ取っています。
たとえば、ある人にとって「沈黙」は落ち着くものかもしれないけれど、別の人にとっては「無視された」と感じるかもしれない。
つまり、自分が思った通りに、相手が受け取るとは限らないのです。この「違い」が、コミュニケーションを豊かにもするし、難しくもしているのです。
「伝えたつもり」と「伝わったつもり」の間にあるもの
コミュニケーションには、必ず「ギャップ」が存在します。
- 自分が伝えたいこと
- 実際に言葉や態度で表現したこと
- 相手が受け取ったこと
- 相手が理解したこと
- 相手が感じたこと
これらは、完全には一致しないのがふつうです。
このズレを理解せずにいると、「ちゃんと言ったのに、なんでわかってくれないの?」「そんなつもりじゃなかったのに、どうして怒るの?」と、お互いに傷つけ合ってしまいます。
でも、ズレが生まれるのは、当然のこと。それを前提にして関わることで、私たちはもっと優しく、もっと深く、人と向き合えるようになるのです。

あなたの「伝わらなかった経験」を思い出してみましょう
あなた自身の体験を振り返ってみましょう。
【 自分への問いかけ 】
- 最近、「相手にうまく伝わらなかったな」と感じた出来事はありますか?
- それは、どんな場面でしたか?
- あなたは、どんな気持ちを伝えたかったのでしょう?
- 相手は、どのように受け取っていたと思いますか?
書き出してみましょう。
書くときのポイント:自分や相手を責めるためではなく、「何がズレたのかな?」と冷静に見つめる視点を持ってください。

コミュニケーションとは、違う世界を持つ者どうしが、何とかして橋をかけようとする営みです。
ズレがあってもいい。すれ違いがあってもいい。大切なのは、ズレに気づき、向き合い、少しずつ橋を強く、広くしていこうとする意志です。
これからのステップでは、その橋をかけるための方法を、ひとつずつ学び、あなた自身のコミュニケーション力を、温かく、確かなものへと育てていきましょう。
次のセッションでは、「そもそもコミュニケーションとはどんなものか?」を、もう少し深く掘り下げていきます。