これまで、聴くでは「相手の言葉や感情を受け止めること」が大切と学んできました。
ここでひとつ重要なことを確認しておきましょう。それは、「聴くの受け止める」と「受け入れる」は、同じではないということです。
「受け止める」と「受け入れる」
「受け止める」とは、相手の発言や行動をそのまま理解することに徹する行為です。相手の言葉や感情に対して賛成も反対もせず、中立の立場でただ受け取り、そのまま認識することが重要です。
「受け入れる」とは、相手の言動や感情に対して、それを承諾し、自分もその意見や考えに賛成することを指します。
「受け入れる」ことも、相手が自身を振り返ることをうながしたり、勇気づけたりする効果がありよいことです。でも、受け入れすぎることが、自分自身を苦しくしてしまう危険があります。
コミュニケーションは、言葉だけでなく、エネルギーのやり取りでもあるという事実にも目を向ける必要があります。
このセッションでは
- 聴くことと受け入れることの違い
- エネルギーのやり取りを意識すること
- 自分を守りながら人の話を聴くコツ、を学びます。
「聴く」と「受け入れる」の違い
- 聴くとは:相手の話を「理解しよう」と耳と心を傾け、受け止めること。
- 受け入れるとは:相手の言葉や感情を「自分の中に引き受ける」こと。
似ていますが、レベルが違う行為です。
聴くときは、相手の話を受け取りますが、必ずしも引き受ける必要はありません。
【 たとえば 】
- 友人が怒りをぶつけてきた
- 家族が悲しみを訴えてきた
こうしたとき、「聴く」ことはできても、その怒りや悲しみを自分に受け入れて、背負う必要はないのです。聴くことと、受け入れて背負うことは、別なのです。
コミュニケーションは、エネルギーのやり取りでもある
コミュニケーションは、言葉だけのやり取りではありません。そこには、相手の感情や存在から発せられる、エネルギーの流れも含まれています。
特に、怒り、悲しみ、不安、絶望感、こうした強いマイナスエネルギーは、無意識のうちにこちらに流れ込んできやすいものです。だからこそ、自分のエネルギー状態を守る意識がとても大切になります。
自分を守りながら聴くコツ
1.心に「透明なバリア」をイメージする
相手の言葉や感情を聴きながら、自分の心に「透明な膜」「やわらかいバリア」があるとイメージします。相手のエネルギーは感じ取りつつ、自分の奥深くには直接入り込ませない。
こう意識するだけで、無意識にエネルギーを受け流しながら聴くことができるようになります。
2.「これはこの人の課題」と区別する
相手の話を聴きながら心の中でそっと思います。「これは、この人自身の課題」、自分が背負ったり、解決しなければならないわけではない。この「課題の分離」の意識が、あなた自身の心を守ります。
3.エネルギーを「通り抜けさせる」イメージを持つ
相手の強い感情に触れたとき、それを吸収するのではなく、「自分の体を通り抜けて、自然に流れていく」イメージを持ちましょう。
呼吸とともに、相手のエネルギーがあなたを素通りして、大地へと流れていくように。これにより、必要以上に消耗せず、温かく聴き続けることができます。
4.自分自身のエネルギー状態を整える
日常的に、深い呼吸をする、好きなことでリフレッシュする、自然の中に身を置く…、こうして、自分自身のエネルギーをクリアに整えておくことも大切です。
自分のエネルギーが澄んでいるほど、相手のマイナスエネルギーに引きずられにくくなります。

聴きながら自分を守る感覚を練習
日常の中で、次の小さな実験をしてみましょう。
- 相手の話を聴くとき、「透明なバリア」をイメージする
- 相手のエネルギーを「通り抜けさせる」イメージを持つ
- 自分の中心に意識を戻しながら聴く
失敗しても大丈夫。大切なのは、「自分を大切にしながら聴く」という意識を持ち続けることです。
【 ふりかえり問いかけ 】
- どんなときに、心が楽に聴けたと感じましたか?
- バリアや通り抜けのイメージは効果を感じましたか?
- 自分のエネルギー状態に意識を向けたことで、違いはありましたか?

「聴く」とは、相手を理解しようと耳と心を開くこと。でも、「受け入れすぎない」ことも、同じくらい大切です。
自分の心とエネルギーを守りながら、温かく、優しく、聴けるようになること。それが、あなた自身を守り、長く豊かな人間関係を育てる土台になります。
次のセッションでは、さらに──「相手に合わせた聴き方の柔軟性」を身につけるについて学んでいきます!