ここまで、「どう聴くか」の基本と深め方を学んできました。けれど、現実のコミュニケーションでは、相手によって、その時々によって、最適な聴き方は微妙に変わってきます。
つまり、すべての人に同じ聴き方をすればよいわけではないということです。
このセッションでは、相手のタイプに応じた聴き方、相手の感覚スタイル(VAK)に合わせる意識を学び、あなた自身の「聴き方の柔軟性」を育てていきます。
相手のタイプによって、聴き方を変える
人には、それぞれ違った、話し方、感情表現の仕方、コミュニケーションのクセがあります。
だから、相手に合わせて、「どう聴くか」を微調整できると、よりスムーズで深い関係が築けるようになります。
相手のタイプ別の聴き方のコツ
相手がそれぞれ次のタイプの人の場合の、それぞれの聴き方のコツです。
- 話すのが苦手な相手:
沈黙を怖がらず、待つ。安心できる雰囲気を作る
- 話が散漫になりがちな相手:
やさしく話を整理しながら、ポイントを拾っていく
- 警戒心が強い相手:
ジャッジせずに、まずは「受け入れ」を徹底する
- 自己主張が強い相手:
一度しっかり受け止めた上で、対話に持ち込む
- 感情豊かな相手:
感情の揺れに共感を寄せながら、受け止める
- 理屈っぽい相手:
論理を尊重しつつ、心の動きにも寄り添う
相手に合わせた微妙な聴き方の違いが、信頼を育てる土台になります。
相手の感覚スタイル(VAK)にも注目する
NLP(神経言語プログラミング)では、人それぞれに「得意な感覚モード」があると考えます。それが、「視覚(V)」「聴覚(A)」「身体感覚(K)」です。
これに応じて、相手が話しやすい雰囲気や言葉の選び方も変えていきましょう。
VAKタイプ別の特徴
- 視覚(V)タイプ:物事をイメージで捉える。言葉に「見える」「映る」などの表現が多い
- 聴覚(A)タイプ:言葉、音、リズムに敏感。耳からの情報を重視
- 身体感覚(K)タイプ:感覚や体験重視。「感じる」「つかむ」などの表現が多い
VAKタイプ別の聴き方のコツ
- 視覚(V)タイプには:相手がイメージしやすいように、絵を描くように話を引き出す
- 聴覚(A)タイプには:言葉のリズムを意識し、聞き取りやすく受け止める
- 身体感覚(K)タイプには:相手の感覚に共鳴しながら、体験ベースで聴く
相手が「どんな感覚で世界を捉えているか」を感じ取ることが、より深い聴き方へとつながります。

相手に合わせた聴き方を試してみよう
日常の中で、小さな実験をしてみましょう。
【 実験テーマ 】
- 相手の話し方、雰囲気、感覚のクセに注意を向ける
- 相手に合わせたペースや反応を意識してみる
- 必要に応じて、視覚・聴覚・身体感覚どのタイプかを探りながら聴いてみる
あくまで自然に、無理なく。「相手に合わせる」という柔らかい心で試してみましょう。
【 ふりかえり問いかけ 】
- どんな場面で、相手とのリズムが合ったと感じましたか?
- 相手が話しやすくなる工夫はできましたか?
- 自分の聴き方に、どんな柔軟性が生まれたと感じますか?

聴く力を本当に育てるとは、ただ一つの聴き方を貫くことではありません。
相手をよく観察し、感じ取り、その人に合わせて「どう聴くか」を微調整できる柔軟さを持つこと。その柔らかさが、深く温かい人間関係をつくっていくのです。
次のセッションでは、この章全体をまとめながら、あなた自身の「聴く力」の成長を振り返ります。