伝わる表現のために ― わかりやすさと丁寧さの工夫

あなたは、こういう場面に出くわしたことはありませんか?

  • 一生懸命説明したのに「結局、何が言いたいの?」と返された
  • こちらは丁寧に話したつもりなのに、相手が不機嫌になった
  • 誤解されて、関係がギクシャクしてしまった

実はこれ、特別なことではありません。

人は、自分が「伝えたつもり」でも、相手にはうまく伝わっていないことがとても多いのです。だからこそ大切なのが──「伝える」ではなく、「伝わる」ことを意識した自己表現

人は、自分が「伝えたつもり」でも、相手にはうまく伝わっていないことがとても多いのです。だからこそ大切なのが──「伝える」ではなく、「伝わる」ことを意識した自己表現

このセッションでは、「わかりやすく、ていねいに、相手に届く」伝え方の基本を学んでいきます。

「伝えた」と「伝わった」は違う

コミュニケーションにおいて、重要なのは「相手にどう届いたか」です。

たとえ話が上手でも、どんなに立派な言葉を使っても、相手が受け取れなければ「伝わった」とは言えません。

自己表現とは、自己満足ではなく相手と気持ちや考えを共有するための「橋をかける」行為なのです。

わかりやすく伝えるための3つの視点

では、どうすれば「伝わる表現」ができるのでしょうか? ポイントは以下の3つです。

1.簡潔さ

  • 一度に詰め込みすぎない
  • 要点を一文で言えるように整理する

たとえば:「本題から話す」練習をするだけで印象が変わります。

2.具体性

  • 抽象語(すごい・ちゃんと・しっかり)を避け、具体的な例で伝える
  • 体験・場面・行動を思い浮かべられるように表現する

たとえば:「ちゃんとやって」は「8時までに報告してね」と具体化。

3.順序立て(構造)

  • 時系列、因果関係、問題→提案…など相手が理解しやすい順番で話す
  • PREP法(結論→理由→例→再主張)はこの構造化の代表です

後のセッションでPREP法を実践しますが、まずは意識から始めましょう。

非言語情報も意識する

言葉だけでなく、声のトーン・表情・話すスピード・目線・姿勢なども、伝わり方に大きな影響を与えます。

  • 小さな声・早口は「自信がなさそう」に見える
  • 無表情だと「冷たい」と誤解されやすい
  • 目を見てうなずくだけで「安心感」が伝わる

非言語こそが“本音”として伝わることがあると心得ましょう。

「翻訳する意識」を持つ

人はそれぞれ、知識や経験、感じ方が違います。だからこそ──自分がわかる言葉ではなく、相手がわかる言葉を使う。これが、“伝わる表現”のために必要な「翻訳力」です。

たとえば:

  • 専門用語をやさしい言葉に置き換える
  • 相手の立場や背景を意識して例え話を選ぶ
  • 相手のペースに合わせて、焦らず丁寧に伝える

相手の世界に「届ける」意識が、信頼と共感につながります。

伝わった/伝わらなかった経験をふりかえる

【 自分への問いかけ 】

  • あなたが「うまく伝わった」と感じた体験はありますか? そのとき、どんな言い方や工夫をしていたでしょう?
  • 逆に「伝えたのに伝わらなかった」と感じた体験はありますか? それは、何が原因だったと思いますか?

その体験から学べることを書き出してみましょう。


伝えるというのは、「一方的に出すこと」ではなく「届けること」。

あなたの言葉が、相手に安心感を与えたり、気づきのきっかけになったり、優しさや尊重のメッセージになったりするために──「わかりやすく伝える力」は、対人関係の土台になります。

次のセッションでは、その土台の上に、より本格的なアサーションの技術を積み重ねていきましょう。

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