「自己表現は大切」とわかってはいても、いざ伝えようとすると、足がすくむような気持ちになることがあります。
- 「嫌われたらどうしよう…」
- 「わがままだと思われないかな…」
- 「怒らせるんじゃないか…」
このような感情の背後には、不安・恐れ・罪悪感といった心理的ブレーキが存在しています。
このセッションでは、そうした心の反応と向き合いながら、自己表現を「少しずつ、自然に」実践できるようになるための考え方と方法を学びます。
「言えない私」は、弱さではない
言いたいことを言えない。自己主張ができない。頼みたいけど頼めない。そんなとき、あなたは「自分はダメだ」と思ってしまっていませんか?
でも実はそれは、あなたが「相手を大切にしている」証でもあるのです。
あなたが「気を使う」のは、「相手に不快な思いをさせたくない」「関係を大事にしたい」という、やさしさと繊細さの裏返しなのです。
まずはその「気づかい」を、自分でねぎらってあげましょう。
自己表現のブレーキの正体
自己表現が苦手な背景には、以下のような心理的要因・心理的ブロックがあって、それぞれに例のように典型的な思考パターンががあります。
- 承認不安:「否定されたらどうしよう」「認めてもらえないかも」
- 拒絶恐怖:「言ったら距離を取られるかも」「嫌われるかも」
- 自責傾向:「自分が悪いのかも」「私が我慢すればいい」
- 罪悪感:「お願いするのは申し訳ない」「相手に負担かも」
- 傷ついた記憶:「昔、言ったら傷つけられた」「冷たくされた」
これらの感情は「過去からくる記憶や習慣」であり、必ずしも今の現実を正しく反映しているとは限りません。それに気づくだけでも、心は少し軽くなります。
気持ちを整理する3つのステップ
1.まず、自分の「感情」に気づく
- モヤモヤしているとき、「怖い」「恥ずかしい」「申し訳ない」と言語化してみる
2.次に「なぜそう感じるのか」を探ってみる
- その感情は、いつ・どんな場面で感じやすいのか?
- 昔の体験と重なっているのでは?
3.そして「今の自分が大切にしたいこと」に目を向ける
- 今、本当に望んでいるのは「つながり」「理解」「安心」ではないですか?
表現しないことによって関係が遠のくリスクに、そっと目を向けましょう。

言えなかったあのときの気持ちをふりかえる
次の問いに、自分のペースで答えてみてください。
- 最近「こう言えばよかった」「でも言えなかった」ことはありましたか? その時、どんな感情がありましたか?
- その感情は、どんな過去の経験と関係していると思いますか?
- もし「言っていた」としたら、どんな未来があったか想像してみてください。(ポジティブでもネガティブでも構いません)
これらをふりかえることで、「言うことの意味」が明確になっていきます。
少しずつ、でも確実に前に進むために
自己表現の力は、いきなり完璧になるものではありません。小さなステップの積み重ねです。
たとえば
- 最初は「ちょっとだけ自分の意見を添える」
- 「相手の言葉に、自分の気持ちを足して返す」
- 「お願いを“控えめ”にしてみる」
そしてここで、これまで学んできた表現の技法を思い出してみましょう。
- アサーションの考え方(誠実・率直・対等)
- アイメッセージで気持ちを伝える工夫
- PREP法でわかりやすく整理して伝える構成
- ミニ・プレゼンで養った「届ける意識」と自信
これらを実生活で「少しずつ試してみる」ことが、心の安心と表現力を同時に育ててくれます。あなたの声は、小さくても意味がある。伝えてみることで、世界が少し変わるかもしれません。

言えないことには、理由があります。そして、その多くはあなたの「やさしさ」「怖れ」「傷つきたくない心」から来ています。
でも、それでも──あなたの中にある本当の願いや想いを、あたたかく、誠実に伝えることは、あなた自身を癒し、相手とのつながりを深める大切な道です。
次回は、日常の中で実際にアサーションを使ってみる、実践チャレンジのセッションに入ります。