ここまで、あなたは自分の気持ちを正直に、わかりやすく、ていねいに伝える方法を学んできました。けれど、どんなに知識があっても、実際に使ってみなければ「できる」感覚にはなりません。
このセッションでは、日常生活の中で「小さなアサーション」を実験的に使ってみることを通じて、「実践の第一歩」と「気づき」を体験する時間にしていきます。
アサーション実践のコツ:完璧を目指さない
アサーティブな自己表現は、「誠実・率直・対等」を目指すものですが、最初から完璧にできる必要はありません。
むしろ大切なのは、「やってみた」こと。そしてその後に、「どう感じたか」「どう受け取られたか」をふり返る姿勢です。実践とは「成長の素材を手に入れる場」なのです。

実験ミッション~日常生活で使ってみる!
次のような小さなチャレンジから、あなたができそうなことを選んで、実際に1週間のあいだに取り組んでみましょう。
チャレンジとその内容の例
- ワンクッション表現を入れる:
「ちょっとだけいい?」「話してもいいかな?」などの丁寧な前置き
- アイメッセージで気持ちを伝える:
「私は〜と感じた」「〜だと嬉しい」など主語を自分にして伝える
- PREP法で短く意見を言う:
結論→理由→例→再主張でシンプルに主張してみる
- NOを優しく伝える:
「ごめんね、今回は無理そう」「また次の機会にできたら嬉しい」など断る練習
- 感謝や喜びを具体的に伝える:
「〇〇してくれて助かった」「あなたのおかげで気持ちが軽くなった」など感情を添える
どれか1つでもOKですし、状況を見て複数試すのもOKです。
ふりかえりシート
実践後に、以下のような問いを使って、ふりかえってみましょう。
- 実際に試してみたことは? 例:アイメッセージで感謝を伝えた
- 相手の反応はどうだった? 例:穏やかに聞いてくれた/思ったより自然に伝えられた…など
- 自分の気持ちはどう変化した? 例:言えてよかった/思ったより怖くなかった/達成感があった
- 次回はどうしてみたい? 例:もう少し堂々と/タイミングを工夫して/次は違う相手に…など
書き出すことで、経験が「身についた学び」に変わります。
うまくいかないときも「宝物」
実践してみて、もしも──
- 相手が望む反応をしてくれなかった
- 伝えたあとにモヤモヤが残った
- 緊張してうまく言えなかった
ということがあったとしても、大丈夫です。その体験の中に、「次にどうすればいいか」のヒントが必ずあります。だからこそ、失敗も「成長の種」にしていく姿勢が大切です。

自己表現は、机上の理論ではなく、「生きた実践」の中で磨かれていきます。勇気を出して伝えてみたあなたには、
すでに「関係を変える力」「自己信頼を育てる力」が芽生え始めています。
これまで学んできたスキルを、あなたらしく使ってみる。それが、あなた自身の「声」を育て、関係をあたたかく変えていく最初の一歩です。
次回は、このステップのラスト。ここまでの実践と成長をふりかえり、日常への統合へ向かうクロージングセッションです。