あなたは、誰かが怒っていたり落ち込んでいたりするとき、次のように感じたことはありませんか?
- 「私のせいかもしれない」
- 「何とかしてあげなきゃ」
- 「どうにかして機嫌を直してほしい…」
その気持ちはとてもやさしいものです。でも、もしそれがいつも自分を責めたり、疲れさせたりしているとしたら──そこには「責任の線引きのあいまいさ」があるかもしれません。
責任の境界線とは?
人と関わる中で、とても大切な視点があります。
「これは『自分の課題』か、それとも『相手の課題』か?」、この問いは、境界線を整えるうえでの基本となるものです。
たとえば…
- 出来事:相手が不機嫌
- 本来の責任は?:→ 相手自身の感情の処理
- 出来事:相手が「頼んだのに」と怒る
- 本来の責任は?:→ 自分が約束したかどうかによる
- 出来事:相手が悩んでいる
- 本来の責任は?:→ 相談に乗るかどうかは「選択」できる
- 出来事:自分が疲れている
- 本来の責任は?:→ 休む責任は「自分」にある
すべてを自分の責任にしすぎると、人間関係は「負担と自己否定」に満ちたものになってしまいます。
「感情の責任」を持つのは誰か?
人はしばしば、自分の感情を他人のせいにしがちです。
- 「あなたの言い方が悪いから傷ついた」
- 「あの人が怒っているのは私のせい」
- 「あんな態度をされたら腹が立って当然」
でも、よく見てみましょう。
私たちは「他人の言動」に反応して「自分で」感情を選んでいるのです。
だからこそ、自分の感情は自分で理解し、表現し、ケアしていく責任があるのです。そして相手にも、自分の感情に責任を持ってもらう必要があるのです。
「助ける」と「背負う」の違いを知る
誰かを助けたい気持ちはとても尊いものです。でも「助けること」と「背負うこと」は違います。
- 助ける:支え、見守る
- 背負う:解決を代わりに引き受けてしまう
- 助ける:相手の力を信じる
- 背負う:相手を無力な存在とみなす
- 助ける:「あなたが決めていい」と言える
- 背負う:「私がなんとかしなきゃ」と思い込む
- 助ける:自分の限界を守る
- 背負う:無理して巻き込まれる
「本当のやさしさ」は、相手が自分の人生を歩む力を尊重することでもあるのです。

責任の線引きワーク
以下のケースを読み、「自分の責任」「相手の責任」「共有すべき部分」の3つに分けて考えてみてください。
【 ケース 】
あなたは同僚に仕事を頼まれ、時間的に厳しいと伝えたにもかかわらず、その人は後日「結局やってくれなかった」と不満そうにしています。
- あなたは、どこまで責任を感じるべきですか?
- 相手の不満や感情にどう関わるのが健全でしょうか?
このワークを通じて、感情と責任の線引きを意識してみましょう。

あなたが誰かの感情や課題を「すべて引き受ける」必要はありません。「自分が何に責任を持つか」を明確にすると、関係性は健全になります。
- 相手の反応は、相手の課題。
- 自分の限界を守ることは、誠実さの一つ。
- 他者を信じ、自分も信じる関係へ。
次回は、こうした意識をさらに深め、適切な距離感を持ちながら、温かく人と関わる力を育てるセッションに進みます。