怒りを壊す力ではなく、伝える力に変える

― 攻撃せず、感情を届ける技術

怒りは、誰もが持つ自然な感情です。でも、多くの人がこう思っています。

  • 「怒ってはいけない」
  • 「怒る自分が嫌になる」
  • 「怒ると関係が壊れる」

その結果、怒りを抑えこむ人と、爆発させてしまう人に分かれていきます。

でも、本当に必要なのは、怒りを「壊す力」ではなく、自分の本音を「伝える力」に変えること。

このセッションでは、怒りを関係を壊す力ではなく、関係を育てる力として使う方法を学びます。

怒りは「心の警報装置」

怒りは、あなたの中の何かが「脅かされている」ことを教えてくれるサインです。

たとえば:

  • 期待していたのに無視された:→ 自分は大切にされないと感じた
  • 不公平に扱われた:→ 尊重されていないと感じた
  • 傷つける言葉を投げられた:→ 安全が壊された・尊厳が傷ついた

怒りの裏には、いつも「本当の願い」や「本当の思い」が隠れています。

「一次感情」と「二次感情」

怒りは、多くの場合「表に出てくる感情=二次感情」です。その奥には、こんな「一次感情」が潜んでいます。

怒りの下にある感情(一次感情)

・寂しさ
・悲しみ
・無力感
・悔しさ
・不安
・傷つき
・失望
・愛

怒りを感じたときには、「本当はどんな気持ちがあるのか?」と問いかけてみましょう。すると、伝え方を変えられるようになります。

感情を「攻撃」から「表現」に変えるには?

怒りをぶつけると、相手は「責められた」と感じ、防衛的になります。でも、自分の感情として「率直に伝える」ことは、関係を深める入り口になります。

【 攻撃 】

「どうしていつもそうなの!」
「あなたって本当に無責任だよね!」

【 表現の転換 】

「私はすごく残念に感じてる」
「もう少しだけ、わかってもらえたらうれしかった」

相手を責めず、自分の気持ちに正直になることがポイントです。

次の話を読んで、おかあさんの一次感情はどんな感情だろうかと考えてみましょう。そして、その感情をお子さんに伝えるとしたら、どんな言葉、態度になるか考えてみましょう。

【 練習問題 】

小学校低学年のお子さんのいるお母さんが、お子さんが学校が終わって帰宅するはずの時刻になっても、なかなか帰ってこないので、心配になり探し始めました。

学校にも連絡して、担任の先生も探してくれるとのこと。でも、みつかりません。家の前で顔面蒼白になってオロオロしていると、お子さんが帰ってきました。

お母さんは、安心しましたが「何してたの!」「どこにいっていたの!」「探したでしょう!」と怒りました。お子さんは、怒られて大声で泣き出しました。

怒りの感情を「分解」してみよう

以下の順番で、自分の最近の「怒りの出来事」を振り返ってみてください。

  1. 最近、腹が立った・イラッとした出来事は何でしたか? または、誰かに怒りの言葉をかけてしまった出来事はありますか?
  2. そのとき、あなたの**「本音の感情=一次感情」**は何だったと思いますか?(傷ついた?がっかりした?無視されたと感じた?不安だった?…)
  3. その気持ちを、どんなふうに伝えることができたらよかったと思いますか?

自分の怒りを「翻訳する練習」です。これが表現力になります。


怒りは、自分の中の「大切にしたいもの」を守ろうとする感情です。

それを抑えこんだり爆発させたりするのではなく、丁寧に言葉にして届けることが真の強さです。このスキルは関係を深めるためだけでなく、自分自身の尊厳や心の平穏を守るためにも欠かせない力です。

次のセッションは、「不安や怖れ」とどうつきあい、それを言葉として届けるにはどうすればよいかを学びます。

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