やさしさを持続させるための心のセルフケア
共感は、人と人を深くつなげる美しい力です。でも──
- 「相手の気持ちをわかりすぎて、こっちがしんどくなった」
- 「気づいたら自分の時間も心の余裕もなくなっていた」
- 「つらさを聴き続けるうちに、自分も疲れてきた」
そんな経験はありませんか? もしそうだとしたら、それは、あなたがやさしい人である証拠。けれど同時に、共感のエネルギーが消耗しているサインでもあるのです。
このセッションでは、共感が疲労になるメカニズムと、「やさしさを持続させるためのセルフケアの方法」を学びます。
共感疲労とは?
共感疲労とは、人の苦しみや悩みに共感しすぎた結果、心が疲れ切ってしまう状態。特に、やさしい人・感受性の強い人・聴き上手な人がかかりやすい傾向があります。
共感疲労のサイン
- 他人の問題をずっと引きずってしまう
- 話を聴くのがしんどくなってきた
- 自分自身の感情が鈍ってきた
- 「誰の話も聴きたくない」と思うようになった
これは弱さではなく、「心のエネルギー不足」なのです。
健全な共感、バランスの崩れた状態
共感とは「相手の心に入りすぎること」ではありません。「一緒にいるけれど、自分を見失わないこと」が共感の成熟したかたちです。そのためには、バランスが必要です。
次の例は、共感が健全な場合と、バランスが崩れた状態です。
【 例 】
- 〇 相手の感情を理解しようとする
- × 相手の感情を自分のことのように背負う
- 〇 相手に寄り添うが、自分の軸を保つ
- × 相手に巻き込まれて自分が見えなくなる
- 〇 話を聴いたあと、自分の時間に戻る
- × ずっと引きずり、消耗する
ポイント~「バウンダリー」を意識する
バウンダリーとは「心の境界線」。
共感に必要なのは「共に感じながらも、混ざりきらない距離感」です。
次の意識が、心の健康を守ります。
- 「それはあなたの問題。私は助けたいけれど、私が抱えるべきものではない」
- 「私はそばにいる。でも、解決を背負うのはあなた」
- 「寄り添うけれど、巻き込まれない」

あなたの共感疲労度を見つめる
次の問いに、正直に答えてみてください。
- 最近、人の話を聴いたあとに「どっと疲れた」と感じたことはありますか? そのとき、どんな気持ちになりましたか?
- あなたは相手の話を聴くとき、「何とかしてあげなきゃ」と思いがちですか? その「思い込み」は、どこから来ているでしょう?
- 「共感しながらも、自分を守るためにできそうなこと」はありますか? (例:ひとりの時間をつくる/ノートに気持ちを整理する/深呼吸/誰かに話す など)
共感疲労を防ぐ「セルフケア」の小さな習慣
共感しながらも自分を守るためにできそうなこと、セルフケアの簡単な方法をいくつか紹介します。
- 1日10分、誰とも関わらない時間を持つ:自分の心をリセットする時間
- 感情をノートに書き出す:自分の感情を整理して「自分に戻る」
- 呼吸を意識する・目を閉じる:心身の緊張をゆるめる
- 「今の私はどう?」と自問する:自分自身の感情にも共感を向ける
あなた自身にやさしくできる人が、他人にも持続的にやさしくできます。

共感とは、「自分を失うこと」ではなく、「相手に寄り添いながら、自分の中心に立っていること」。
人の痛みや苦しみに寄り添えるあなたは、尊い存在です。そのやさしさを枯らさないために、「心の境界線」と「自分への共感」を、どうか大切にしてください。
次のセッションは、ズレや違いの正体を見抜く力──「なぜ人間関係ですれ違いが起きるのか?」を構造的に見ていくセッションに進みます。