― 防御から信頼へ、関係を調整するコミュニケーション
人と人の間に生じる対立や誤解。それはできれば避けたいことかもしれません。
けれど、「あのときちゃんと話せていたら」「もっと早く本音を出せていたら」そう思う出来事が、誰にでもあるはずです。
関係を壊すのは「ズレ」ではなく、「対話の放棄」なのです。このセッションでは、対立や誤解を建設的な対話で乗り越えるための具体的技術を学びます。
ズレが起きたとき、私たちがしてしまいがちな反応
- 無言になる、離れる、避ける(シャットアウト)
- 相手を責める、感情的になる(攻撃)
- 自分の正しさにこだわる(正当化)
- 「どうせわかってもらえない」とあきらめる(諦念)
どれも自然な反応ですが、「理解し合う対話」からは遠ざかってしまいます。
対話が成立する「3つの鍵」
1.自分の感情やニーズを「アイメッセージ」で表現する
【 例 】
- ×:「なんでそんなことするの!」(責める)
- 〇:「私は、少し悲しかったんだ。わかってもらえなかったように感じて」(感情+理由)
ポイントは、「自分はどう感じていたか」「何を大切にしていたか」を主語にして話すこと。
2.相手の「意図」や「背景」を聴く
【 例 】
- ×:「どうせ、またあなたはそうやって…」
- 〇:「あのとき、どんな気持ちで言ったのか、聞かせてもらっていい?」
相手の「価値観」や「前提」に耳を傾けることで、対立は対話に変わります。
3.「正しさの押し合い」ではなく「ニーズの共有」にシフトする
対立は、実は「正しさ」の衝突ではなく、「ニーズ」のすれ違いであることが多い。
【 例 】
- 「時間にルーズすぎる!」対 「時間通りに動くとプレッシャーが強すぎる」
- →「お互いに心地よくいられる工夫ってある?」
どちらが正しいかではなく、「何を大切にしているか」を話し合う視点が鍵。

ミニ対話シナリオ
次のようなすれ違いがあったと仮定して、自分ならどう対話するか考えてみましょう。
ケース:一緒に仕事をしていた相手が、約束の時間を守らなかった
- あなたは責任感が強く、時間を大切にしている
- 相手は「少し遅れても大丈夫」という考えで、あまり悪気はなかった
あなたなら、どんな言葉で自分の気持ちとニーズを伝えますか? どんなふうに相手の意図を聴こうとしますか? 書き出してみることで、対話の準備が整っていきます。

対話とは、相手を論破することではなく、違いを越えて、つながり直す試みです。
- わかってもらいたいなら、まずわかろうとする
- 正しさを主張するより、大切にしたいことを語る
- 解決を急ぐより、お互いの声を聴き合う
そんな姿勢が、ズレの中に信頼を育てていきます。
次のセッションは、対話だけでなく「関係が壊れてしまったとき」にどう修復していけるか──「傷ついた信頼をどう立て直すか」に進みます。