壊れやすく、でも育てていけるもの
「この人になら話せる」「何かあっても、受け止めてくれる」「一緒にいて、心が落ち着く」、こうした感覚があるとき、私たちはその相手に「信頼」を感じていると言えます。
信頼とは、相手の言葉や行動が自分にとって「安全」であると感じられる経験の積み重ね。つまり、信頼関係とは、小さな「安心」の積み重ねによって育つものなのです。
信頼とは「安心」の連続である。
信頼は「瞬間」ではなく「経過」である
人間関係の中で信頼を感じるようになるには、時間がかかります。それは、以下のようなプロセスを通じて築かれていきます。
- 繰り返される小さなやりとり(挨拶、相づち、気づかい)
- 予測可能な反応(急に態度が変わらない、一貫性がある)
- 誠実な行動(隠しごとをしない、約束を守る)
- 感情の扱いがていねい(否定しない、共感しようとする姿勢)
これらの経験を通して、「この人は大丈夫そうだ」「この関係は安心できそうだ」と思えるようになるのです。
信頼が壊れるときに起きていること
一方で、信頼は簡単に壊れてしまうこともあります。特に以下のようなことが起きたとき、関係にひびが入る可能性があります。
- 期待を裏切られた
- 話を聴いてもらえなかった
- 感情を否定された
- 話が一方的だった
- 嘘やごまかしを感じた
これらの出来事が「1回きり」でも、そのときの影響が大きかったり、他の不安と結びつくと、信頼は崩れます。
ただし、信頼は「修復可能なもの」でもあります。誠実な謝罪や対話を通して、「また少しずつ関係を整えていくこと」は十分に可能です。
「信頼」をつくる人の共通点とは?
信頼されやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。
- 一貫性がある:態度や反応が安定している(ブレが少ない)
- 相手の立場を考えられる:共感的で、視野が広い
- 適度な自己開示がある:「この人も人間だ」と感じられる安心感
- 無理にコントロールしない:相手に判断をゆだねる余白がある
こうした要素は、誰もが後天的に身につけていけるものです。特別な性格や才能ではなく、日常の関わり方の中で育っていきます。

あなたが「信頼できる」と感じる人は?
ここで、次のことを考えてみてください。 これらの問いは、あなたがどんな信頼を求めているか・与えようとしているかを明らかにしてくれます。
- あなたにとって「信頼できる」と思える人は誰ですか?
- その人の、どんな言葉や行動が「信頼」につながっていると思いますか?
- 逆に、これまで信頼が崩れた経験には、どんな背景がありましたか?

関係は「育てる」ものなのです。信頼関係は、特別な技術ではなく、あり方と積み重ねです。
大げさなことをしなくても、「相手に安心してもらおう」という意識があれば、その関係は自然とあたたかく、持続可能なものになっていきます。
次のセッションでは、信頼をさらに深めるために大切な要素「自己開示」について見ていきましょう。