~ 出来事ではなく、考え方が感情をつくる
論理療法は、心理学者アルバート・エリスが提唱した、思考と感情と行動の関係に着目した心理療法です。この療法は、前ページの認知行動療法の基盤の一つとなっています。
論理療法の基本的な考え方はシンプルです。
人が苦しむのは、出来事そのものではなく、その出来事に対して自分がどんな「信念(Belief・ビリーフ)」を持っているかによる
この視点を深めるために、論理療法では有名な『ABCモデル』が使われます。
ABCモデルとは?
ABCとは、それぞれ次の頭文字です。
略語:意味 | 説明 |
---|---|
A:Activating Event(出来事) | 何かが起こる |
B:Belief(信念・考え方) | その出来事についてどんな考えを持ったか |
C:Consequence(結果) | その考えによって生まれた感情や行動 |
つまり、心の流れはこうなっています。
出来事(A) → 考え方(B) → 感情・行動(C)
人は「A(出来事)」に苦しんでいるのではない
たとえば──
- 【A】友達から連絡が来なかった
- 【B】「きっと嫌われたに違いない」と考えた
- 【C】悲しみ、怒り、不安が生まれた
別の人なら、同じ出来事でも、
- 【A】友達から連絡が来なかった
- 【B】「忙しいのかもしれない」と考えた
- 【C】特に気にせず、日常を過ごした
このように
感情を生み出しているのは「B(信念・考え方)」であるというのが、論理療法の基本的な考え方です
問題の焦点は「B」にある
私たちはつい
- A(出来事)を変えようとしたり、
- C(感情)を直接どうにかしようとします。
でも、論理療法では、
- 出来事を変えようとするのではなく
- 感情を抑え込もうとするのでもなく
- B(考え方)を見直すことを大切にします。
なぜなら、考え方(B)を見直せば、結果(C)が自然と変わるからです。

あなたのABCを書き出してみよう
最近、心が大きく動いたできごとをひとつ思い出してみてください。
- そのときのA(出来事)は?
- そのときのB(自分の考え・受け取り方)は?
- そのときのC(感情・行動の結果)は?
簡単な例:
A(出来事) | B(考え方) | C(結果) |
---|---|---|
上司に注意された | 「自分は役に立たない」 | 落ち込み、自己否定 |
書き出してみると、「どんな考え方が、どんな感情を生み出しているか」がはっきり見えてきます。
考え方(B)を書き換えると、世界が変わる
同じ出来事でも、考え方を変えると、感じる世界が変わってきます。
- 「注意された」→「役に立つために教えてくれている」
- 「友達が連絡をくれない」→「相手にも事情があるかもしれない」
そう捉え直すことで、不必要に落ち込んだり、怒ったりすることが減っていきます。
B(考え方)を見直すことは、自分を苦しみから解放するためのカギなのです。

- 人が苦しむのは「出来事(A)」によってではなく「考え方(B)」
- 出来事 → 考え方 → 感情・行動の流れ(ABCモデル)を意識しよう
- 考え方を見直すことで、感情と行動を変えることができる