少し難しくなりますが
人生態度のベースとなる『人生の基本的姿勢』を持つ過程を説明します。
なお、「人生態度」が「人生の基本的姿勢」と説明されていることがありますが、この講座では、より分かりやすくするために、2つをわけています。
人生の「基本的姿勢」を持つプロセス
人は、誕生前からの生育・成長過程で、「一般的に」次のようにして人生の基本的姿勢を持ちます。
なお「一般的に」と書いたのは、たとえば、私・森信人には、一般とは違うこともあったからです。
でも、私もそういうことの影響も抜けて変われたように、人は変われます、よくなれます。
誕生前~生後7、8カ月 『基本的信頼の時期』
この時期は母親と自分の区別がつかない母子一体の状態です。
一般的に穏やかな優しい声に包まれ、求めずともたくさん見てもらえて声をかけてもらえて触れてもらえて、オムツを汚しても優しく反応してもらえて欲求を満たしてもらえます。
つまり、無条件に肯定的な「存在認知」をもらえて、あるがままですべて肯定される時期で、「自分も周りもすべてOK」の基本的信頼の時期と言われます。
「存在認知」とは
あるものの存在を認識すること、あるいは誰かの存在を認め、尊重することです。
生後7、8カ月~
人の顔、表情を判別して、自分に安全な人かを見分ける能力が育ち始めます。
ハイハイ、歩きはじめ 基本的信頼のゆがみの始まり
思うままに移動したり、手を伸ばしたりして、「いけません」「ダメ」等と強い口調、表情でも否定されて、「自分のOKは必ずしもOKではない」という事態が起きてきます。
基本的信頼がゆがみ、母親や周囲のOK・NOを、声の調子や表情から察知するようになっていきます。母子分離が始まります。
1歳半頃 ~
母親と自分は別の人格だという母子分離の自覚ができます。
2、3歳頃には、母親、自分、父親という三者関係を保とうという意識も働き始めます。
行動が盛んになり、「ダメ」等、「否定の存在認知」を与えられることが多くなります。見てもらえていないことも増え、身体的な接触も以前ほどなくなります。
欲求が多く複雑になるけれど気づいてもらえない、わかってもらえない事態も多く起きてきます。
認知を得るための試し
そうして、親や周囲からの存在認知に不十分さを感じると、どうしたら得られるか試すようになります。見捨てられないようにするにはどうしたらいいか試すようになります。
- 私はだめ、私が悪いのような「自分はOKではない」という感情を、例えば泣いたり、すねたりする行動で表して認知してもらえると、この感情の表現をして認知を得ていこうとします。
- 攻撃的になり、たとえば物を投げたり、かみついたりなど「あなたはOKでない」という感情をとがった行動で表して認知してもらえると、この感情の表現をして認知を得ていこうとします。
そうして認知されると、認知が肯定的でも否定的でも、認知されたときに「使った感情」を表す行動をするようになります。
5 、6歳頃 『人生の基本的姿勢』を幼児決断
上記の試行錯誤から「幼児決断」して
人生態度のベースになる「人生の基本的姿勢」=自分や他者、生きることへの思考や感情、行動を左右する反応のプログラムを無意識に持ちます。
偽の感情の「ラケット感情」
上記で存在認知を得るために使った感情で、本当とは違う感情は、そのために起こした感情 であって「偽(ニセ)の感情」で「ラケット感情」と言います。
ラケット感情は、親など養育者からの存在認知を得るために表現して身に着けた偽の感情です。
ラケット感情は、解消されいないと大人になっても続き、人間関係に無意識に働きます。人生態度のありように現れます。
ラケット感情の例
例えば、子どもがコップの水をこぼした時
子どもは、水をこぼして、本来は悲しかったり、怒りの感情を抱くわけですが、その感情を認められるのではなくて、「またこぼして!」と叱られることがあります。
- たとえばこの時、子どもが後悔のような感情表現を示し「次は気をつけなさい」と承認の存在認知をもらいます。
- そして「失敗」は悲しむ、怒るではなく「後悔」するという偽の感情の表現を知ります。
- 同様の関わりが繰り返されると、失敗したとき「後悔」を示して存在認知をもらおうとすることを幼児決断して、「後悔」というラケット感情を身につけます。
人生の基本的姿勢の4種類
人生態度のベースになる「人生の基本的姿勢」は、ラケット感情が影響し、自分、他者に対する肯定感、否定感の持ちようで、次の4種類あります。
I’m OK, You’re OK
自他肯定―存在認知を得るためにラケット感情を使う必要が少なくてすみ、基本的信頼のゆがみが少なく育ち、信頼感に根ざし自分と他者を素直に肯定できる姿勢。
I’m OK, You’re not OK
自己肯定・他者否定-「自分はOK」で「あなたはOKじゃない」というラケット感情で存在認知を得たことから持つようになった姿勢で、この姿勢のままだと、人間関係で「あなたはOKじゃない」という感情になること、行動をする傾向があります。
I’m not OK, You’re OK
自己否定・他者肯定-「あなたはOK」で「自分はOKじゃない」というラケット感情で存在認知を得たことから持つようになった姿勢で、この姿勢のままだと、人間関係で「自分はOKじゃない」という感情になること、行動をする傾向があります。
I’m not OK, You’re not OK
自他否定-どのようにしても存在認知を得られることが少なくてなった姿勢で、この姿勢のままだと、人生は価値がない、人の存在は意味がない等と虚無的になる可能性があります。
人生態度
そして人は、人生の基本的姿勢で生きはじめます。
人生の基本的姿勢は、様々な経験を通して変化して、今、現在の人生の姿勢・態度を持ち、それを人生態度と言います。
基本的姿勢、人生態度が変わらないと、人は何歳になってもラケット感情が無意識に 働いて、思考や行動を左右します。
でも、人生態度は変わります、変えることができます。