〜本当の気持ちに、もう一度出会うために
ラケット感情とは?
交流分析(TA)では、ラケット感情という概念を用いて「本来の自然な感情が抑圧され、代わりに身につけた感情パターン」を説明します。
わかりやすく言うと──
ラケット感情は
「本当はこう感じたかったけれど、感じているけれど、それを出せなかったから、代わりに別の感情で表現してきた」、そんな心の癖です。
ラケット感情はなぜ生まれるのか?
ラケット感情は主に幼少期の環境適応の中で生まれます。
- 存在認知が欲しい
- ある感情を表現すると怒られる、拒絶される
- 別の感情を表現すれば受け入れられる、守られる
そうした体験を重ねるうちに、子どもは「存在認知を得るために」「受け入れられるために」「生き延びるために」
自然な感情を隠し、代替感情を選ぶようになります。
これは、そのときの子どもにとって必要だった「心の防衛手段」です。
ラケット感情のバリエーション 例
以下はよく見られるラケット感情のパターンです。
本来の自然な感情 | ラケット感情(代替感情) |
---|---|
寂しさ | 怒り、無関心 |
悲しみ | 無表情、冷笑 |
甘えたい気持ち | 強がり、自立過剰 |
恐れ、不安 | 攻撃性、開き直り |
罪悪感 | 自己犠牲、過剰な謝罪 |
喜び、うれしさ | 抑えた態度、謙遜しすぎる反応 |
助けてほしい気持ち | 無力さの演技、すねる |
愛情を表現したい | からかい、皮肉でごまかす |
本音を伝えたい | 無口になる、無関心を装う |
次のページにさらに細かく多く紹介していますが、これらは、その時その場で「これなら受け入れられる」と子どもが判断した結果、習得してきた「感情の演技パターン」とも言えます。
ラケット感情はあなたを守ってきたもの
もう一度、大事なことを伝えます。
ラケット感情は──あなたが弱かったからでも、間違っていたからでもありません。
- 「受け入れられるために」
- 「生きるために」
子どもだったあなたが、必死に選び取った心の知恵だったのです。だから、自分のラケット感情に気づいたときも、責めるのではなく、やさしく受け止めることが大切です。
わたしのラケット感情を探してみよう

ラケット感情のリストを見て、自分にありそうなものをチェック!
【自分への問いかけ】
- 最近、怒りや無関心、強がり、過剰な謝罪など、特定の感情表現が目立った場面はありますか?
- それは、本当に自分が感じていた自然な感情と、一致しているでしょうか?
- もしかしたら、「本当はこう感じたかったのに」と思う気持ちはありますか?
【 記入例 】
ラケット感情として感じたこと | 本当は感じたかったかもしれない感情 |
---|---|
イライラして怒鳴ってしまった | 本当は寂しくて甘えたかった |
強がって「平気」と言った | 本当は怖くて不安だった |
必死に謝り続けた | 本当はもう少し自己主張したかった |
ラケット感情のより細かなリストは次のページにあります。

わたしの「本当の気持ち」に近づくために
【 やってみよう 】
- 最近の印象的な出来事をひとつ思い出してください。
- そのとき表に出した感情と、本当は感じていたかもしれない感情を両方書き出してみましょう。
【 ワーク記入例 】
出来事 | 表に出た感情(ラケット感情) | 本当は感じたかった感情 |
---|---|---|
上司に叱られた | 無表情で平気なふりをした | 本当は怖かったし悲しかった |
ラケット感情に気づくと、心が自由になり始める
ラケット感情に気づくことは、本当の自分を取り戻す第一歩です。
- 怒りの奥に、寂しさや悲しみがあった
- 強がりの奥に、怖れや不安があった
- 無関心の奥に、愛されたい、わかってほしいという願いがあった
そんなふうに、心の奥に眠っていた温かな感情と再会することができるのです。

- ラケット感情とは、子ども時代に身につけた「代替感情パターン」
- 本来の自然な感情を守るために、感情表現をすり替えてきた
- 気づきと受容によって、自然な感情を取り戻し始めることができる