ステップ1

マインドフルネス瞑想の歴史

前ページでマインドフルネスを4分類してみました。この講義では、マインドフルネス瞑想の歴史を少し詳しく知り、マインドフルネス、マインドフルネス瞑想とは本来、何かを知りましょう。

【動画による講義】

【文字による講義】

マインドフルネスという言葉の発祥

今から140年ほど前、1881年に、仏教の『正念(しょうねん)』のことが「マインドルネス」と英訳されました。

現存している最も古い仏典の言語のパーリ語のイギリス人の学者(トーマス・ウィリアム・リス・デイヴィッズ)が、パーリ語の仏典から、そう英訳しました。

仏教には、その実践の核として『八正道(はっしょうどう)』というメソッドがあります。マインドフルネスと英訳された「正念」はその中で特に重要なことです。

マインドフルネス瞑想の原点は、仏教の瞑想法

仏教は開祖の釈迦が亡くなってから、様々に伝達されました。

大きくはチベットや中国、韓国、日本などに伝わったルートの『北伝(ほくでん)仏教』と、スリランカやミャンマー、タイなど南へ伝わったルートの『南伝(なんでん)仏教』があります。

伝達されながら、北伝仏教は様々な宗派になりました。南伝仏教はそうではなく『上座部(じょうざぶ)仏教』(テーラワーダ仏教ともいう)が、長く続いてきました。

その上座部仏教が大切にしてきたパーリ語の仏典から、「正念(しょうねん)」のことがマインドフルネスと英訳されました、

私は上座部仏教国のミャンマーで修行しました。

上座部仏教のサヤドー(長老)は、英語で正念のことをマインドフルネスと言い、正念の瞑想法のヴィパッサナー瞑想のことをマインドフルネスの瞑想と言います。

そして、ヴィパッサナー瞑想のセットにサマタ瞑想があります。

  • マインドフルネスの原点は、仏教の正念
  • マインドフルネス瞑想の原点は、仏教のヴィパッサナー瞑想
  • そして、ヴィパッサナー瞑想のセットとしてサマタ瞑想があります

なお、このコースでは、仏教のマインドフルネスが原点なので、それを「本来のマインドフルネス」、ヴィパッサナー瞑想とサマタ瞑想を「本来のマインドフルネス瞑想」と呼ぶことにします。

マインドフルネス瞑想の近年のアメリカでの経緯

アメリカでは、まず仏教の禅の普及がありました。

禅の普及

1900年前後に、日本から日本の禅が伝わり広まりはじめました。

1950年代には、ビート・ジェネレーションと言われた人たちに禅の受容が盛んになりビート禅と呼ばれ、哲学者や詩人や作曲家などが積極的に禅に親しむようになりました。

鈴木俊隆師

1960年代になると、日本の曹洞宗が日本人僧によるアメリカ人向けの指導を本格化し、その原動力は鈴木俊隆(しゅんりゅう)師でした。

鈴木俊隆師は、1959年に渡米してサンフランシスコ桑港寺(そうこうじ)の住職になり、サンフランシスコ禅センターなども開設しました。

原点の仏教の本来のマインドフルネスの普及

禅の普及に並行して、1960年代から正念のマインドフルネスを中心に、仏教の教えを説く仏教の僧が活動をはじめました。

著名なのがアメリカに亡命していたベトナム人禅僧のティク・ナット・ハン師です。

ティク・ナット・ハン師

ティク・ナット・ハン師は、現代のマインドフルネス、仏教的なマインドフルネスの世界的な普及者の第一人者です。

原点のヴィパッサナー瞑想の普及

上座部仏教のドイツ人の僧、ニャナポニカ・テラ師が仏教出版協会を設立。

発行した冊子が世界的に普及し、上座部仏教、ヴィパッサナー瞑想が知られるようになりました。

ニャナポニカ・テラ師

1976年、ジャック・コーンフィールド氏、ジョセフ・ゴールドスタイン氏が、ヴィパッサナー瞑想を取り入れ、インサイト・メディテーション協会を設立しました。

ジャック・コーンフィールド氏は、タイの上座部仏教の高僧、アーチャン・チャー師の弟子で、アーチャン・チャー師の元で約6年間修行し『手放す生き方』の原書の共著もしています。

このコーンフィールド氏とゴールドスタイン氏のもとで、マサチューセッツ工科大学のジョン・カバットジン教授が、ヴィパッサナー瞑想に取組みました。

カバットジン教授は、1960年代半ばから「韓国禅」の韓国人僧のスン・サン師に師事し、長年、坐禅を実践していました。

ダライラマ14世とカバットジン教授

そして、ヴィパッサナー瞑想に取組んだとき、かつてない体験をしました。

近年の西洋型のマインドフルネス瞑想の登場

医療系のマインドフルネス瞑想の登場

カバットジン教授は、ストレスと疼痛(とうつう)緩和のために、坐禅とヴィパッサナー瞑想のやり方を加工した瞑想とヨガの取組みによる『マインドフルネスストレス低減法』を構築。

1979年に、マサチューセッツ工科大学の医学部教授になり、マインドフルネスに基づくストレス低減を実施するストレスクリニックを創設して、その8週間のプログラムを開始しました。

そして、原点の仏教の本来のマインドフルネス瞑想以外に、この瞑想もマインドフルネス瞑想と言われて広まるようになりました。

精神療法・心理療法系のマインドフルネス瞑想の登場

J.D.ティーズテール氏らが、カバットジン教授のマインドフルネスストレス低減法が、うつ病の再発防止に効果があると、精神障害の治療のためにマインドフルネス認知療法を開発しました。

このマインドフルネス認知療法によって、さらにマインドフルネスは知られるようになり、認知療法以外にも応用され取り入れられるようになりました。

ビジネス系のマインドフルネス瞑想の登場

ビジネスパーソンとしてパフォーマンスがあげられるように、グーグルが社員の能力向上にマインドフルネス瞑想の講座を導入しました。

さらに、2007年には瞑想も含んだプログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」を開発しました。

SIYは、瞑想そのものというより、ビジネスパーソンとして成果をあげるための人材開発・能力開発のメソッドの面が濃くなっています。

グーグルの講座、プログラムが社外にも広まったことが契機になり、マインドフルネス瞑想はビジネス界に広まっていくようになります。

2014年には「マインドフルネス革命」の文字がアメリカの世界的なニュース誌のタイム誌の表紙を飾りました

近年のマインドフルネス瞑想の日本における経緯

1995年、ティク・ナット・ハン師が来日して約20日間、各地でリトリート、瞑想会、講演会を行い、著書の翻訳も進められて出版されるようになりました。

同じころから、上座部仏教のスリランカ人の僧のアルボムッレ・スマナサーラ師が、講演や瞑想会を実施するようになりました。

2007年、カバットジン教授の著書が『マインドフルネスストレス低減法』と改題されて復刊され、2012年には教授が日本に招聘され、ワークショップが開催されました。

2013年の日本マインドフルネス学会をはじめ、関連する団体が創設されるようになりました。

そして、2016年頃から、NHKなどが番組や本などで紹介することもたびたびあるようになって、マインドフルネス瞑想を知る人はいっきに多くなりました。

初めは『マインドフルネスストレス低減法』を応用したようなものが紹介され知られるようになり、しだいに『マインドフルネスストレス低減法』、そして原点の仏教の本来のマインドフルネス瞑想が知られるようになりました。

流行するにつれて出てきた問題

心理療法やビジネスや教育などの分野で効果を得る目的に特化したやり方のものが、さらにつくられるようになりました。

また、熟知していない人による情報や講座など広まったり、なんにでもマインドフルネスの名前が付けられたりするようにもなりました。

結果、目先の実利を追っているものと言われたり、効果を得られなかったり、低い効果で満足してしまっている人が増え、8%の人は心の状態がとても悪くなっている等の研究報告もでてきました。

禅、坐禅とあいまいに

日本の場合は、マインドフルネスを禅、マインドフルネス瞑想を禅の坐禅と同様のものとして、禅僧などが教える傾向も現れるようになりました。

私は、禅僧になり専門僧堂で修行生活を送り、禅、坐禅を修行して、その後、原点のヴィパッサナー瞑想とサマタ瞑想も本場のものを習得しました。

そういう私には、禅、坐禅は素晴らしいですが、マインドフルネス、マインドフルネス瞑想とは違うことがはっきりとわかります。同じようにしていると、マインドフルネス、マインドフルネス瞑想しての効果は得られません。

原点の仏教のマインドフルネス瞑想を選ぶ人の増加

そして、流行するにつれて、出てきた問題や、マインドフルネス、マインドフルネス瞑想の原点、本来は何か知る人が多くなってきました。

また、原点の本来の仏教のマインドフルネス瞑想は、加工された西洋型より効果が広く高いことも知られるようになり、取組む人が増えるようになりました。

  • マインドフルネスの原点は、仏教の正念
  • マインドフルネス瞑想の原点は、仏教のヴィパッサナー瞑想
  • そして、ヴィパッサナー瞑想のセットとしてサマタ瞑想があります

このコースは

原点の本来の仏教のマインドフルネス、マインドフルネス瞑想の希少な総合的なプログラムです。

2018年にスタートしました。西洋型のマインドフルネス瞑想の元の1つの坐禅で瞑想の基礎を身につけ、原点のサマタ瞑想、ヴィパッサナー瞑想をしだいに力をつけて最高レベルまで取組めます。

マインドフルネス瞑想がはじめの人、西洋型のマインドフルネス瞑想に取組んでいた人たち、海外に住んでいる日本人、日本語のできる外国人の受講も増えています。