ステップ3

慈悲の瞑想とは

慈悲の瞑想は日本の仏教にはありませんが、ブッダが生きていたときからあって、サマタ瞑想、ヴィパッサナー瞑想を守り実践してきたミャンマーなどの上座部仏教で取組まれてきた素晴らしい効果の仏教の代表的な瞑想の1つです。

慈経という経が元で、慈経はこの次の講義で紹介します。

集中のサマタ瞑想の一種

このステップの始めの講義でサマタ瞑想について学びましたが、慈悲の瞑想はサマタ瞑想の一つです。ですから瞑想の種類としては集中の瞑想になります。

慈悲の瞑想は単独で取組むか、気づきの瞑想のヴィパッサナー瞑想と集中の瞑想のサマタ瞑想は鳥の両翼ですから、ヴィパッサナー瞑想と一緒に取組んでヴィパッサナー瞑想の支えにもなります。

効果

集中の瞑想なので取組んだ時に心が静まり集中が高まります。そのために取組むように勧められるものですし、他の瞑想の前にそのためにします。

また、慈悲の瞑想は慈悲の文章を心の中または声に出して唱えるので、寛容な心になり、取組みを繰り返していくと慈悲の意識も養われます。

そして、そのほか素晴らしい効果があります。釈迦は、弟子で息子のラーフラに、慈悲の瞑想の効果を次のように言ったと大ラーフラ教誡経に書かれています。慈悲の瞑想は瞑想としては1つですが4つの瞑想のように説明しています。

  • 慈の瞑想を深めれば、どんな憎しみも消えてしまう
  • 悲の瞑想を深めれば、どんな残虐性も消えてしまう
  • 喜の瞑想を深めれば、どんな不満も消えてしまう
  • 捨の瞑想を深めれば、どんな怒りも消えてしまう

慈悲の瞑想で唱える文章は、釈迦・ブッダが説いた四無量心(しむりょうしん)、4つの心「慈悲喜捨(じひきしゃ)」が元になっているものが標準的なのでて4つの瞑想のように説かれています。

また、他の経典には次の11の利益があると語った書かれています。

  • 安眠できる
  • 安らかに目覚める
  • いい夢を見る
  • 人に愛される
  • 天人や動物に愛される
  • 天人に守られる
  • 火・毒・武器などの外界の危険から守られる
  • 心が喜びに満ち溢れ、澄み渡る
  • 肌の色艶が輝き澄み渡る
  • 安らかに往生する
  • 幸福に生まれ変わる

現実生活の取組みも必要

ネットなどでは慈悲の瞑想だけで様々な効果があるように説明されていることがありますが、並行して日常の心がけや言動・ありかたの取組み、実際に慈悲の心がけや行為がないと、正しい方向性での効果は得られないリスクがありますし、現実生活に良い効果としてはあまり現れません。

また、気づきの瞑想・ヴィパッサナー瞑想の取組みとの相乗効果で得られるところが大です。

この講座ではステップ1から日常の基礎などを取組んできていますし、次の講義なとで慈悲、慈悲の実践について学べます。ステップ4からヴィパッサナー瞑想に取組み始めます。

やり方の基本

坐る瞑想のように坐り、文章を心の中でや声に出して唱えます。

種類としては集中の瞑想のサマタ瞑想ですから、文章と文章を唱えることに専念します。1行1行、文を集中して唱えます。

下記でどんな文章を唱えるか紹介しますが、文章の内容を意識的に想像や考えたりする必要はありません。集中して唱えれば意識は文章の内容をしっかりととらえています。

唱える文章の例

文章は一般の人にもわかる普通の言葉の文章です。

慈悲の瞑想は上座部仏教で実践されてきたものですので、上座部仏教系の文章を4種類紹介します。

ゴエンカ式の文章

(参照 日本ヴィパッサナー協会)

ゴエンカ式は、このプログラムのステップ4で取組むようなミャンマー人の在家者のゴエンカ氏がひろめた在家者用のボディスキャン型のヴィパッサナー瞑想の方法です。私も合宿に参加して習得しましたが慈悲の瞑想にも取組みます。

チャンミェ・サヤドーの文章

チャンミェ・サヤドー(長老)は、僧が修行でも取組む世界的にも最も代表的なヴィパッサナー瞑想の方法のマハーシ式の普及者であったマハーシ・サヤドーの特に優れた弟子とされている大長老です。私がミャンマーで修行したのはチャンミェ・サヤドーの寺院でした。

スマナサーラ長老の文章

(転載:「ブッダの日常読誦経典」)

スリランカの僧のスマナサーラ長老の文章は、この文章を主語を「私」、次に「私の親しい人々」、「生きとし生けるもの」、続いて「私の嫌いな人々」「私を嫌っている人々」にして唱えます。

プラユキ・ナラテボー氏の文章

(転載:『「気づきの瞑想」を生きる』)

プラユキ・ナラテボー氏はタイのスカート寺の日本人の副住職です。この慈悲の思いを込めた祈りの言葉を「わたし」からはじめて、師、両親、身近な人、すべての人、すべての生き物にまで広げ、心の中で唱えていきます。

このプログラムで唱える文章

このステップの次の講義で学びます。